ノートブック

アンヌ・ドラース

シャルトルーズ、リニューアル

ひとめ見た瞬間、すぐさま魅了されました。カロン・セギュールは宝石箱の中でひときわ輝くパールです。

石壁で囲まれたドメーヌ。静寂につつまれ、静寂が、ぶどう畑、18世紀のシャルトルーズ建築、庭園、そしてチャペルを守っています。ありのままの空間に思えるけれど、実は完璧にオーガナイズされており、優雅であり。時には職人たちのざわめきが響きわたる、巧みにあやつられた精緻さから生まれる空間。どうすればこの規律正しい空間を損なわないでいられるか。プライバシーとミステリーに満ちたこの空間は、どんな手段を使ってでも守らなくてはなりません。 

邸宅建築はそれぞれ独自のランゲージ(言語)を持っています。このワイナリーは出会いの瞬間からわたしに語りかけてきます。今回の建築プロジェクトはワインづくりのメタファーになり得る。共通の言語で説明できる。感動を誘う、分析する、熟させる、デカンタする、ストラクチュアを組む、ブレンドする、ひたすら待つ、味わう。この場所を形づくった思い出に配慮しました。この場所に生きるエスプリをとらえ、守る。人間の歩んだ歴史と時の流れとの接点。すべてを定義してしまわずに、その面影を感じ取る。

光と無限を表現するために、空間のストラクチュリングでは透明性を重視しました。視界は広く、奥行きを強調。続き間でのスペース配置を重んじました。空間にさらなるボリューム感を持たせるため、梁柱はそのまま吹き抜け構造にしました。視線は梁にそって移動し、ディテールへと移るように。順序が逆にならない限りは。

ストラクチュアは優美で明るく、それでも華美にならないよう、そして気品に満ちた装飾を心掛けました。ぶどう畑に囲まれたこの別荘は、幾年もの時代を乗り越えた「野畑にたたずむ貴族の邸宅」なのですから。

巧みに計算された窓サイズ、吟味されたジロンド県で採取された石が奏でるリズム。庭園の泉の水面にうつる秋の空。それらに気がつき、感動をおぼえるうち、徐々にこの場所にひそむエスプリの虜になっていくのです。

カロン・セギュールには、その壮大な過去にふさわしい「魂」がたしかに存在します。

ダマスク、ビロード、ピケ、エパングレ... 空間をさらに美しく飾る、絹、麻、綿、羊毛でできた生地。色彩はミネラルあるいはベジタル。礫のクリスタル感。多様な天候にさらされ、焦げたかのようなぶどう樹の色調。古色加工されたメタルのブロンズカラーや金褐色、あるいは若葉のしげる枝を思わせるみずみずしいカラー。

洗練された色彩のいくつかが絡まるように配置されています。しっとりと深みのあるプロシア・ブルー。セギュール侯爵の肖像画を見事に彩ります。また、ワインの外観さながらの、ミステリアスなガーネット・カラー。

調度品や装飾品はいずれも、優雅でありながら、凝りすぎない、落ち着いたエレガンスを追求して選ばれた品々です。

カロン・セギュールのエッセンスを探る... それは五感を駆使してシャトーのエスプリを再現する作業でもあります。